こんにちは。昨今のロードレースでは距離を問わず厚底シューズが主流となってきました。一方で薄底シューズの良さも改めて認識されるようになり、その間をとった中厚底のシューズもラインナップされてきました。
今回は中厚底シューズの火付け役とも言われるアディダス「タクミセン」シリーズの「アディゼロ タクミセン10」についてレビューしていきます。
「タクミセン10」の特徴
長距離ロードレース向けの中厚底シューズ
「タクミセン10」は5〜10kmのロードレース用がコンセプトとされておりスピードモデルの位置づけです。
サポート機能よりも軽量性・反発性が重視された設計で、ソール厚みは最大33mmで反発弾性と接地感が両立された仕様となっています。
スペック及び前作との違い
タクミセン10のスペック上の特徴と前作(タクミセン9)との違いを以下にまとめます。
- ソール厚みは踵部33mm, ドロップ6mm(前作と同じ)
- 高反発性素材「ライトストライクプロ」を全面搭載(前作と同じ)
- 「エナジーロッド2.0」をフルレングスで搭載(前作は前中足部のみ)
- 重量は197g(前作は180g, 27.0cm)
- グリップ性能の高い「コンチネンタルラバー」を一部採用(前作と同じ)
- アッパーの質感が柔らかくなった
- ソールの剛性が高くなった
実際の履き心地と走行感については以下の項にまとめております。
サイズ感・履き心地
サイズはやや縦長で横に狭め
縦のサイズ感は前作同様に1サイズ相当大きめに感じました。そのため、2サイズで迷う場合は普段と同じ〜ワンサイズ小さめで問題ないと考えます。但し、横幅と高周りが細くなったため、甲高幅広のランナーには窮屈に感じるかもしれません。
フィット感は好みが分かれるかも
前作同様にアッパーは薄手の非伸縮性で軽量感がありますが、質感は前作よりもパリパリ感が無く柔らかいと感じました。好みが分かれると思いますが、いずれもホールド感と通気性が良好でした。
一方で、シュータンの補強がなくなり足首・踵周りのホールド感が低くなったと感じました。個人的なフィット感はタクミセン9>10>8に感じました。そのため、足首・踵のフィット感を重視する、靴紐はキツく縛りたいランナーは前作の方が相性が良いかもしれません。

前作(タクミセン9):シュータン先端が補強されています。

タクミセン10:シュータンがスウェード調で補強はありません。

ヒールカップはありませんが滑り止めのパッドがついています。
走行感
前作よりも屈曲性が低くプレート感が強くなった
前作同様に薄底の反応の速さと厚底のバウンド感を合わせたような走行感でした。但し、前作に比べてシューズの剛性が高く(曲がり難く)、シューズに合う走り方が変わったように感じました。一言でいうと「アディオスプロ3の薄底版」です。
具体的には、前作までは前足部が屈曲しやすく前足部に乗りこんで重心移動していくようなピッチを上げやすいシューズでしたが、「タクミセン10」はシューズを曲げるのに力が必要でソールとエナジーロッドにしっかり力を溜めて反発させる厚底シューズ寄りになったと感じました。そのため、反発の最大値は前作よりも高くなったと言えます。
総じて、体重や脚力のあるランナー、厚底に慣れたランナーはタクミセン10、足捌きを重視するランナーはタクミセン9の方が相性が良いと考えます。前作とは走行感が異なるため履き替えの際には履き慣らしておくことをオススメします。
グリップ、安定性は前作同様、接地方法は選ばない
ラバーの配置が変更されていますが前作同様にグリップは良好です。若干ですが内側(母指球側)に体重が乗りやすいと感じました。

タクミセン10

前作(タクミセン9)
安定性も前作と同様でしたが「エナジーロッド2.0」がフルレングスで搭載されたことで前作に比べて踵から中足部までの重心移動がスムーズで更に接地方法を選ばなくなったと感じました。
5km中心にフルマラソンのレース用にもオススメ
接地感とクッション性のバランスが良いため、スピードモデルにしてはペースの許容幅が広いと感じました。強いて言えば、キロ4分台(サブ3.5)からソールの反発性を感じやすかったです。特にキロ3分台ではオートマチックに反発を得やすく、速いペースほど恩恵を受けられると感じました。前作よりも約20g重くなりましたが特に重さは感じませんでした。
スピードの最大値が高く出力した分にスピードに反映されるため、コンセプト通りに全力を出し切れる距離(5~10km, 駅伝)なら走力を問わずシューズの特性を発揮できると考えます。一方で薄底シューズよりもクッション性が高いため、厚底スーパーシューズだと接地感が遅いと感じるランナーにとってはフルマラソンまで広く使えると考えます。
耐久性
ポイント練習(キロ3~4分)で500km使用した時点で、アウトソールの踵内側が削れてきていますがミッドソールの劣化は感じていません。他のシューズではそのような削れはないため、踵接地のランナーでは踵部が早く削れる可能性が高いです。
アッパーもソールも耐久性は前作(タクミセン9)よりも高いと考えます。
まとめ
- 反発弾性、操作性が両立された中厚底シューズ
- 屈曲性が高くなり厚底シューズ寄りの走行感になった
- アッパーのフィット感が柔らかくなったが好みが分かれる
- 5~10kmのレース用、スピード練習用にオススメ
- 一概に前作より優れている訳ではなく好みで履き分けられる
コメント
いつもありがとうございます。
参考にさせて頂いております。
43歳市民ランナー
ベスト 3時間32分
現在、ミズノのウェーブエアロ20を
履いております。
シューズについてお尋ねです。
リベリオンフラッシュ2や
マジックスピード3など
厚底系に興味もある一方で
足裏感覚が失われてしまう不安も
感じてます。
ただ、ふくらはぎを2回ほど
痛めてしまっており、厚底の方が
そこの負担を和らげることが
できるのではとの思いもあります。
厚底に頼り切ってしまうかもという
踏ん切りと、挑戦してみたい
狭間で揺れてます
漠然として申し訳ありませんが
何かアドバイスありましたら
お願い致します。
コメントありがとうございます。
質問者様が仰る通り、最近の厚底系シューズは接地感が少ない反面、ふくらはぎの負担が減る工夫が施されているものが多いです。
ふくらはぎ(特にアキレス腱)は修復が比較的遅く、連日負荷をかけ続けると故障のリスクが上がるため、厚底シューズの使用は有効だと考えます。
一方で厚底ばかり履いていると、ふくらはぎの筋力が低下して結局怪我のリスクを下げられなかったりレース中に攣ってしまうジレンマがあるため、個人的には厚底系と薄底系の併用がオススメです。厚底スーパーシューズをレースで頼るのと普段から頼るのとでは意味合いが違ってくると考えます。
また、同じ厚底シューズでも接地感の高いモデルもあります。
筆者の知見では、ディビエイトニトロ(プーマ)、マッハ(ホカオネオネ)、クラウドモンスター(ON)は接地安定感が高くオススメです。
厚底系が合わなかったら、ふくらはぎの負担を減らすための用途におろせますし、現在のシューズが自分に合っていることが確信できるため、厚底系にトライするメリットは大きいと考えます。
拙い意見で恐縮ですが、シューズ選びの後押しになれば幸いです。
サブ3.5頑張ってください!